February 25, 2006

育てるということ (5) − さいごに −

 人間の場合, AC 的傾向が強い親は,第三者に対して閉鎖的でルールの多い,温かみや笑いの少ない家庭を作り勝ちです.そしてそんな家庭が,やはり AC 的性格の強い子を育ててしまいます.また,虐待や暴力で育てられた子は,それらを恐怖して感覚を鈍磨させる一方で,そういう関係を理想化するという困った性質を持っています.だからそういう子供は,成人してからカルト的な組織に耽溺したり,やはり暴力に支配される家庭を作る傾向があると言われています.アルコール依存症の父を持つ娘は,意識の上ではそれを嫌悪しながらも,やはりアル中っぽい性格の夫を選んでしまい勝ちです.そう,AC 的性格だけでなく,暴力や虐待そのものも世代を越えて伝播する性質を持っているわけです.始末の悪いことですが...

 これがイヌにも当てはまるような気がします.私のせま〜い見聞の中でも,暴力的なボスの元ではその群全体が暴力的なルールで支配されているかのような印象を受けます.他人に攻撃的なイヌの飼い主は,やはりどこか他人に対して警戒しているところがあるように感じられます.逆に,大らかで自信を持っているボスのもとでは,群全体もなごやかな雰囲気になりますし,なんとなく暖かくてユーモラスな空気さえ漂っています.もちろん,私自身の先入観や思い込み,それにイヌそのものの個性もあるでしょうが,だいたいの傾向としてはそんなに外れていないと思います.
 どんな群にしたいかは,個人の価値観の問題になるので,どれが良くてどれが悪いなんて言えません.でも,もしイヌと人間に共通する部分があるとすれば,適切な母性と父性に育てられなかった子は,辛い生きにくさを背負っているのではないでしょうか? 飼い主や他人や他イヌへのヒステリックな攻撃...このうちのいくらかは,うまくオトナになれなかったイヌからの,心の悲鳴なのかもしれません.

   人間どうし一緒に暮らしていれば,たとえ1日数時間の同居でも両者の性格は相互に侵入しあいます.イヌは全身で飼い主を見ています.しかも,ことばという変なフィルターを通さずに,気分や感情の動きを身体全体をアンテナにして感じています. 「イヌを見れば飼い主がわかる」 ということばもあります.犬の性格が飼い主の性格,特に無意識の領域のそれを反映したとしても,全然不思議ではないと思います.
 というわけで,まったくもって独断的なことを,ノンノンシャンシャンと書き連ねてきました.特に後半は 「これが正しいのだ」 なんて主張するつもりは毛頭ありません.独り言みたいなものだと思ってください.

 まぁ,最後にざっくり言ってしまえば, 「イヌも子供も育てるのことの本質は同じ.母性と父性が機能することが必要だし,何よりも,育てる側が オトナ でないと難しいのでは?」 ということを言ってみたかったわけです.

そんなけ!

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