February 25, 2006

コトバと情報と犬 (2) −コトバの威力−

 で,コロッと話を変えて ”コトバ”について書きます.最近,人間ってコトバに頼ってるなぁとあらためて思うのです.

 人間の心には意識と無意識とがあって,意識は氷山の一角みたいなもので,それよりずっと大きいのが無意識の領域であることが知られています(どうやって較べるんだろ?).しかし,人間の行動を決定しているのは,少なくとも表面的には意識です.そしてその意識がもっぱら頼りにしているのがコトバです.
 よく,英語に慣れた人が 「一人で考え事するときも英語で考えてんだよな〜」 なんて嬉しそうに言ってますが,まさに意識がコトバで考えていることを示しています.

 確かにコトバは強力です.状況,景色,事象,思考,感情,論理,,,およそありとあらゆることが表現できます(逆に考えれば,人間はコトバで表現できるものしか認識していないから,と言えるかもしれませんが).
 コトバに弱点があるとすればその伝達効率でしょう.百聞は一見にしかずと言いますが,例えば絵画の内容を伝えようとすると,絵を相手に見せれば一瞬で事足りますが,口で説明すると何百何千ものコトバを費やさないといけない.あくまでコトバは事象や論理の一端だけを抽象化した記号に過ぎない,ということなんでしょう.

 人間がここまで文明を築いてこられたのは,間違いなくコトバのおかげです.でも,もしその進歩に限界があるとすれば,それもやっぱりコトバのせいだろうと考えています.
  「個を見て全体を見ない」 というのは人間の考え方の短所の一つだと思いますが,まさにコトバの性質がそのまま反映されているのではないでしょうか.(逆に言えばそんな不完全なコトバだからこそ,大切に扱わなくてはいけないのでしょう.)

 一方,犬のコミュニケーションは基本的にマルチモーダルです.声だけでなく姿勢,視線,耳,尻尾,被毛,呼吸,匂い,,,色んなチャネルをいっぺんに使ってメッセージを伝えています.私たちはコトバを使って自分の意図を犬に伝える(押しつける?)ことには真面目に取り組みますが,彼らからのメッセージはなかなかわからないし,あまりわかろうとしていないように思えます.
 そして多分,マルチモーダルな情報を理解するためには無意識領域も動員して高速並列処理する必要があるのですが,それが意識=コトバ優位の脳になってしまった人間には結構難しいことなのです.私たちは普段,無意識=身体からたくさんの情報を得ていますが,意識の世界に持ってくる過程でそのほとんどを切り捨ててしまうからです.

No comments: