June 14, 2012

時の守り神 (2)時間を忘れる

どちらかというと、自分は「動物好き」に分類される人間だと思う。
子供のころからずっと、犬猫と暮らしたいと思っていたし、事情が許す限りそうしてきた。
事情が許さなくても、無理して猫を飼ったくらいである。夫婦そろってアパートを叩き出されたが。

今現在もたくさんの動物たちと暮らしている。
それで何をしたいのか?と問われたら、自分でもよくわからない。あえて言えば、日々を過ごす動物たちを眺めることが好きなのである。

近くに住む知合いは、実生活でうまく行かないこと(夫婦喧嘩とか!)があると、わざわざファームまでやって来る。
それで何をするでもない。一人でぼぉ~~~っと馬を見ている。
やがて、納得すると帰っていく。
おいおい勝手に来て勝手に帰んなよ、と思うが、気持ちはわかる気がする。
それだけで、ちょっぴり元気になれるんだよね。

ただ、動物と言ってもハムスターや小鳥は飼ったことがないし、爬虫類や昆虫も、できれば一つ屋根の下で寝起きするのは避けたい方である。
観葉植物を室内に置いたり、観賞魚を飼うという趣味も、長い間理解できなかった。
手間もお金もかかるのに、あんな反応の無いものと暮らして、一体何がうれしいのか?

ところが先日、ある友人からおもしろい話を聞いた。
彼は自分で会社を切り盛りするメチャクチャ忙しい人物だが、一時期、大層な水槽を買いこんで熱帯魚を飼育していたらしい。

「で、何が良いわけ?」
「よくわからん、、、けどハマるんだよ」
「まさか、世話すると懐くとか、話ができるようになるとか、恩返ししてくれるとか言うなよな」
「そーじゃない。ただ見てるだけだ」
「見ておもしろいのか?」
「別に。ただ不思議なことに、みつめだすとそのまま1時間でも2時間でも見てられるんだ」
「へぇ」
「ほんとに、時間を忘れるんや」
「・・・」
「ま、いいから騙されたと思って飼ってみ」

騙されるのはヤだから飼わないけど、その感じは理解できる気がした。
もしかしてそれって、自分が動物を眺めていたいのと同じじゃないだろうか?さらには海や山や空に見入ることにも通じるのでは、と。

私たちはどうやら、動物や自然を見つめることで何かしらの恩恵を受けているらしい。
そしてそのキーワードは、たぶん「時間」である。


つづく
 

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