April 24, 2010

空間脳と関係脳(1) -意外な悩み-

たぶん犬という動物は,ポジショニングとか姿勢とか,そういう空間的な感覚がとてもデリケートにできている.いや,人間の感覚が鈍いと言った方が正確かもしれない.どちらにせよ,その辺のズレが微妙なすれ違いを生んでいる気がする.
...そんなことを思いついたので,忘れないうちにメモしておく.

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Barbara Sykesさんのファームには,現役の羊追い犬はもちろんのこと,役者犬やコンパニオン犬,レスキューされた子や隠居犬まで,常時20頭前後のボーダーコリーが暮らしている.
若犬から老犬まで,それぞれが皆,何らかの役割りを持っている.
本当に個性はさまざまだが,「使えない犬はいない」と彼女は力説する.

それだけの犬がいると,しつけや訓練がさぞ大変やろうと思いきや,実際はそうでもない.
少数の犬を連れて散策にでかけることもあるが,犬と「向き合って」何かを教え込んでいる場面を見たことが無い.農場管理,家畜たちの世話,センターの運営,コンサル,雑誌の編集,執筆,訓練士など,多くの仕事を一人で背負っている彼女には,その時間と余裕が無い,というのが正直なところかもしれない.
それでも,犬たちは従順だし,何より活き活きと暮らしている.

Hiroが「ヨークシャー滞在記」に書いたが,そんな彼女も,犬小屋の配置や向き,家畜たちの動線などについては,意外なほど気を遣う.昼食を立ったまま済ませるほど慌しい生活なのに,あーでもないこーでもないと思い悩むんだそうである.いくら広いといっても,犬,人,家畜が一緒に暮らす敷地.無用な摩擦を避け,お互いの生活に干渉することがないよう,いつも心を砕いているのだ.
(ただオスたちは,お気に入りの1頭を除き,"Boys"と一括りにされて冷遇されているように感じるのは,同性意識から来る僻みだろうか)

基本的なしつけやトレーニングをおろそかに考えてるわけではない.ただ,何かを「教え込」んだり「禁止し」たりするよりも,まず「状況を整える」ことを優先しているのだ.


つづく
 

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