April 24, 2010

空間脳と関係脳(3) -見えずとも-

んじゃあ気をとり直して他の例,というわけで,昔どこかで読んだ話を紹介する.
ファームで働く,ある年老いたシープドッグのエピソード.

その犬は,放牧場に散らばった羊たちを,小屋まで連れてくることを日課にしていた.
ところがある日,敷地に置かれたバケツに頭から突っ込んでしまう.それを見ていた農夫は,「最近,仕事が遅いと思ってたら,ここまで耄碌してたか.もうお払い箱だな」と毒づく.

しかしその数日後,農夫はたまたま訪れた獣医から,次のように告げられる.
「この犬は目が見えてないよ」
「数ヶ月前には完全に視力を失ってたはずだ」
「日ごろの様子を見てて,気がつかなかったのか?」
犬は,牧場の地形を完全に記憶し,何箇所かの手がかりと羊の匂いだけで,仕事をこなしていたのだ.次第に弱まる視力を自覚し,自分でやり方を工夫していったのだろう.
農夫は悄然として犬に謝る,というところで話は終わる.

確か実話として紹介されていたと思う.
後天的に視力を失っても,それを悟られずに仕事をこなす犬の能力に驚かされる(そういえば,全盲のゴールデンが「ボールのレトリーブ」で遊ぶのを,目の当たりにしたことがある).

いや,もしかしたら,良くできた作り話なのかもしれない.それでも,この話が「そういうことってありそーだよね」と語り継がれてきたとすれば,少なくとも農夫たちの間では,犬の空間認知能力が認められてきた,ということだ.

(ん~,これも良い例じゃなかったですね)
 
 
つづく
 

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