April 24, 2010

空間脳と関係脳(6) -犬との関わり-

要するにこの雑文で何が言いたかったかというと,私たちが犬と接するとき,その意識が過剰に関係性に向かっていないだろうか,ということである.もちろん,犬も優れたコミュニケーション能力を持っているが,少なくとも人間よりは,場所や状況に多く依存しているはずである.

よく,「うちの犬,家ではよく言うことを聞くのに外では全然!」といった愚痴を聞くが,状況依存的な犬の行動原理を思えば,ムカッ腹くらいは抑えられる.
そもそも,犬が言うことを聞かないと,私たちは「裏切られた」とか「犬が逆らった」と感じるけれど,その感じ方こそが,関係脳が得意とする「擬人化」や「共感」が機能した結果なのである.

大抵の場合,犬は人間の指示に逆らおうと意図したのではなく,置かれた状況にしたがって行動しただけである.人間の指示は,その「状況」の一つに過ぎない.人は,「あのね」と話しかけられた相手にほぼ100%の注意を向けるが,他の動物に同じことを期待するのは筋違いというものである.

Barbaraさんは,犬におもちゃを与え「これは齧って良いけど,家具はだめ」と教えることを,「フェアではない」という表現で戒める.確かに,物を分別してそれと行動を結びつけるのは,関係脳の人間には朝飯前だが,犬には難しいかもしれない.
この場合,ざっくりと「居間は人間のスペースであって,そこにあるものも人間のものである」ことを示す方が簡単だし,理にかなってもいる.その代わり,犬の居場所は別にきちんと確保して,そこにあるものは自由にして良い,ということを保証してやる必要はあるけれど.


つづく
 

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