空間をきめ細かくスキャンニングすることは,生存戦略として非常に有効である.敵の気配をいち早く察知してリスクを回避できるし,食物や水を逃す機会も減る.そもそも,空間や時間を区切って「住み分ける」ことは,種の多様性を確保するための大自然のルールである.
(山だろうが谷だろうが,極寒だろうが熱帯雨林だろうが,昼だろうが夜だろうが,あたり憚らず元気なのは人間と微生物くらいだ)
では,なぜ人間ではその能力が衰えたのか.
言い換えれば,精緻な空間認知に代わる生存戦略上の武器は何なのか?
それは,「関係性」の知覚だと思う.
人と人,人と動物,人と物,物と物,,,人間はおよそさまざまな事象の関係性を知覚することに長けている.風の加減で桶屋の売上げを予想したり,路傍の石に自分の人生を重ねるなんて離れ技は,とても他の動物にはできない.その能力があったからこそ,道具を発明し,ロジックを構築し,複雑な社会を形成することができたのだろう.高度なコミュニケーションも,相手との関係性を推し量る能力抜きには考えられない.
複数のセンサ情報を統合的に処理し,複雑な空間マップを生成するためには,多くの情報処理リソースが必要である.おそらく人間は,その一部を犠牲にすることで,関係性に対する優れた認知機能を獲得したのだ.
あえて対比させて名づけるなら,犬と人の脳はそれぞれ,「空間脳」「関係脳」と言えるかもしれない.
(↑ほらね,人間ってどうしても「関係」の話にしちゃうでしょ?)
つづく
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