June 7, 2011

アジールとしてのファーム(1) -重たい話から-

ファームを拓いて7年が過ぎた。動物たちとの暮らしを自分たちなりに試行錯誤してきた。いろいろと凸凹はあったけれど、総じてみればプラスの面が多かったと思う。
どうするという当ても無く、ただ「犬と暮らす」ために作ったちっぽけな牧場だが、それはそれで意味があるんじゃないかと思えるようになってきた。そんなことを改めて考えてみる。


いきなり重たい話になるが、日本の自殺者数は年間3万人だそうだ。
ネットで調べると、人口10万人当たり25.8人で、これはWHOの調査対象104カ国中の5位。いわゆる先進諸国の中では堂々のトップを走る。1998年以降13年連続で3万人を超えており、今も増加傾向にある。
これって何なんだろう?

何だかんだ言って、日本は悪くない国だと思う。
深刻な飢餓は無いし、義務教育はほぼ100%だし、医療費は抑制されてるし、凶悪犯罪は少ないし、貧富の差が拡大してるといってもアラブ諸国や米国や中国やロシアの比じゃないし、表現は自由だし、食料買うのに行列しなくてもいいし、識字率は99.8%だし、プロ野球もJリーグも大相撲も盛んだし、テロは無いし、電車もバスも時間に正確だし、酷寒でも酷暑でもないし、国歌に起立しなくても強制収容所に送られないし、それに何より、60年以上に渡ってただの1人の戦死者を出していないし。
そりゃあ課題も山積みだが、人々がかくあるべしと作り上げてきた国としては、かなり良い線行っていると思う。

なのに、3万人。
正直、今まではこの数字を見聞きしても、それが多いのか少ないのか、どうもピンと来なくてスルーしていたのだが、今回の震災で死者&行方不明者が2万4千と聞いたとき、初めて「うっ、、、」という気持ちになった。
震災の場合はほんの数日間の被害者数とはいえ、500年あるいは1000年に一度とも言われている大災害だ。それに匹敵する数の人が、毎年毎年、自ら命を絶っている(しかもその背後には、10倍とも20倍とも言われる未遂者がいる)。これは大変なことかもしれない。
いくら豊かで安全であっても、「生きやすい」とは限らない、ということ。人間は難しい。

この事実は、世界に向けてもっと声高にアナウンスされてもいい。
と同時に、政治の貧困や企業の横暴などを「悪者」に仕立て安直に原因を求めるのは、ことこの問題に関しては自重すべきだと思う(実際、日本は「悪くない国」なんだし)。
たとえ居心地が悪くても、誰もが、自分自身の問題として考えるべきだと思う。

つづく
 
 

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