July 25, 2008

本当は怖いヒトの本能 (4)

子宮への回帰を願う個体保存欲動は基本的に内向き指向になるが,性欲動は外向きの推力を持っている.繁殖のためには他の個体との接触が必須であり,特に人の場合,これが生き方や価値観の異なる他者との交流に繋がるからである.この2つの推力のバランスによって,人それぞれの生き方の色合いが決まる.
そして今の日本社会の空気は,おそらく"内向き"である.
個人主義,じこちゅー,モラトリアム,引きこもり,自分らしさ,他罰的,依存・嗜癖,オタク,オレ様,共同体の崩壊,老後の不安,,,などの世評タームを並べるとそうとしか思えない.

例えば少子化.この現象を個体保存欲動の昂進で説明することは難しくない.
もともと子孫を残すという行為は,その生物個体にとってはメリットが無いどころか,リソースの分け前が減り,行動が制限され,結果として快適さの著しい低下をもたらす.だから本来,子作り子育てなんてことは,性欲動がしっかり働いて個体保存欲動を適度に抑制してくれないことには,ちょっとできない相談なのである.
そう考えると今の出生率低下は意外でも何でもない.逆にここまで経済優先で自己実現万歳の世の中になっても,それなりに子孫を作り続けてるという事実に,生き物としてのシタタカさを見るようで感動すら覚える.

ついでに言うと今,少子化問題対策として雇用ルールの改訂とか,子育て負担の軽減とか,税の優遇とか打ち出されている.それはそれで必要だと思うのだけれど,それらが結局は損得勘定であり,個体保存欲動と同じ目線なのが気になる.

最近の環境問題でも思ったけれど,経済のワーディングに拠らない方策というのは,私たちにはもう発想すらできないのだろうか?
そもそも,少子化現象を問題として捉えること自体,物事を経済の色メガネで見てしまっていることの証とも言えるのだけれど.
 

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