July 25, 2008

本当は怖いヒトの本能 (2)

ところで対立する2大本能と言えばフロイトのエロスとタナトスを思い出す(って知らんかったくせによく言うな,おめーわよー).エロスは生きることや創造や生殖を,タナトスは死を希求する本能とされる.
切り口は違うが,エロス/タナトスに含まれるさまざまな欲望は個体保存欲動と性欲動でも説明できる.ただ,タナトスの「死を積極的に希求する」ような欲望は個体保存/性欲動には見当たらない.強いて言えば,性欲動の「個体の死なんかどーでもいい」がそれに相当する.

タナトスは人の破壊的衝動を説明するために考案されたものだが,どこか余分にヒューマニズムが混じってるようで座り心地の悪いところがある.まろ的には「どーでもいい」くらいの方が人智を超えた無常感が漂っていて腑に落ちる.

他の動物と較べたとき,ヒトの特徴は個体保存欲動が強いことだろう.個体としていかに快適に,有意義に生きるかということに思考と行動のリソースが集中的に投入される.

それが行き過ぎるとどーもうまくない,ってんでご先祖たちは,個体保存欲動をコントロールすることに営々と取り組んできた.宗教はもとより,道徳倫理,社会ルール,社会制度,慣習,なんちゃら道,しつけ,,,いわゆる「人の生き方」に関わる文化資産は,多かれ少なかれ個人の「我と欲」(≒個体保存欲動)の抑制をテーマとしてきた.その一方で,成熟と交流を促すさまざまな仕掛けが社会システムの中に作り込まれてきた.

史実だか司馬氏の創作だかは知らないが,少年時代の吉田松陰は,勉強時間に虫に刺された頬を掻いたのを見咎められ,家庭教師役だった叔父から半殺しの目に合わされたのだそうな.その叔父が特に凶暴だったとか,不幸な少年時代を背負ったDV野郎だったというわけではない.「本来,公に属するはずの勉学の時間に,頬を掻くという私の行為を優先した.今これを見逃せば将来どうしようもない人間になる」という信念がそうさせたのである.当時の社会にはそんな価値観があった.
 

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