May 5, 2008

コトバで考える葦(1)

ヨークシャの農場主バーバラ・サイクス氏のトレーナとしてのモットーは,TLC(Think Like Canine)という.

「犬のように考える」「犬として思う」「犬目線になる」...一見ありふれたメッセージだが,こういうのは大抵,やさしく考えれば何ということはないのに,悩み出せばキリが無いものと相場が決まっている.
実際,お前らの頭ん中わかんねー!って,じぇちの理解不能な行動に直面するたび,深く深く絶望させられる.

人が人として考える時,どうしてもコトバが介在する.
「犬のように考える」には,まずこれがハードルになる.

例えば,「犬は家族を群と見なして,そのリーダーをアルファとして尊重する」という考え方.

一郎君とジョンは寝るときも食べるときもいつも一緒だった.それでまぁ仲良くやっていたのだが,ある日を境に生活が一変する.ジョンはベッドから追い出され,食餌は一郎君が終わるまで待たされるようになり,大好きだったソファ寝が禁止され,散歩のときは歩く位置まで決められてしまった.そういえば,一郎君の声まで何やら低くいかめしい...一郎君はその日なんちゃら講習会に参加して,パックリーダ説に感銘を受けて帰ってきたのだ.

頭=コトバで考えることで,生き物に対する態度までガラッと変えることができるのが,他には無いヒトという動物の特徴だ.考えてみれば,これは結構すごいことだ.動物が急に態度を変えたら,,,例えば怯えて逃げるだけだった鳥が,急に襲ってくるようになったら恐怖映画になってしまう.
じぇちはもともと人づき合いの不器用な犬だが,最近は随分と改心したようで,たま~に撫でてくれと自らせがむようにまでなった.それでも,手が届くまであと5cmというあたりでスッと身を引くような,基本路線の態度は変わらない.彼女の行動は奇怪で予測不可能だが,行動自体は変わってもその "奇怪で予測不可能" な感じはこの先もずっと変わらないだろう(泣).

ところでパック理論は,それがオオカミの習性の名残だとする論拠が納得しやすく,広く受け入れられた.しかし,そもそもその論拠自体がスカで,犬は人をアルファになんか見ていないという説もあり,どうも最近はそちらの方に勢いがあるらしい.


つづく
 
 

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